家庭教師のみらい

12月23日(金)公開の映画「かがみの孤城」を観てきました。

不登校をテーマとしたこの作品は、私と辻村深月さんという偉大な作家さんに出会わせてくれた私にとって大切な作品です。

この記事ではその感想とともに、不登校の子ども達を取り巻く環境について思うことを綴っていきます。

かがみの孤城とは

2017年5月11日に発売された、辻村深月さんの小説です。

不登校となった中学一年生の主人公こころと、鏡の世界のお城で出会った6人の似た境遇を持つ子ども達との人間模様、お城の謎、それらに向き合っていく作品です。

「不登校」とテーマがテーマであったので、興味本位でこの本を買って読んでみましたが、この作品、ひいては作家辻村深月さんの世界観に引き込まれてしまいました。

読書とは無縁の生活をしていた私がハマった作品です。当然私だけでなく多くの方の目に触れ、そして愛され、2018年本屋大賞を受賞しました。

そんな支持を受け、2022年12月に待望のアニメ映画化となったわけです。

今回は原作はもちろん、映画の魅力とともに不登校支援をしている私なりの視点での感想を述べていきたいと思います。

作家・辻村深月さん

なぜそれだけ多くの方に惹かれた作品となったのか。

私は作家・辻村深月さんの表現力の賜物だと思っています。

かがみの孤城にハマってから彼女の作品をいくつか読んでみましたが、とにかく心理描写がお上手で「読んでいて心が抉られる」という体験を何度もしました。

この記事を読んでくださっている方は不登校というキーワードは近しい存在かもしれません。

しかしその中で、不登校を体験し、当事者として抱える悩みを直に感じたことがある方はどれだけいるでしょうか。

私は高校生の頃、「学校に行きたくない」「本気で学校を辞めたい」思ったことはありましたが、なんとか3年間通いきることができました。

なので当事者の気持ちを100%理解しているかと言えば答えはNOです。

しかしそれを疑似体験させてくれたのが辻村さんです。

読書をしているだけなのに、自分が追い詰められているような焦燥感を掻き立ててくる、そんな表現を随所にしてきます。

なぜ学校に行かないのか?

「『行かない』ではなく『行けないから』です。」

と言われてもピンとくるかと言われれば、やはりぼんやりとしたもの、と思う方も少なくないと思います。

辻村さんの表現力によってそれを何となくハッキリしたものになるかと思います。

ぜひ本を通してそれを感じてほしいですし、それを感じさせるような体験を映画館でしていただきたいです。

【微ネタバレ】劇場版感想

ここからはそんな魅力をふまえて、劇場版の感想を綴っていきます。

物語の本筋は極力避けますが、登場人物の境遇や心情を書いていきます。ネタバレ要素を含む可能性もありますので、まだご覧になっていない方はぜひ先に劇場へ足を運んでみてくださいね。

さて、まず劇場版の感想を一言で残しておきましょう。

最高でした

動くこころ達を観れたのもうれしかったですし、何より話がわかりやすい構成になっていた印象でした。

大人たちはもちろん、まだかがみの孤城を読むのは難しいという小学生が観てもなんとなくわかるストーリーになっていたかと思います。

なぜ不登校になるのか

原作でも印象的でしたが、映像化されることでより印象強いシーンとなったのが、こころの家にクラスメート達が押しかけてくるシーンです。

先にも挙げた辻村さんの表現力が存分に発揮されている「心を抉られるシーン」です。

視聴者である私たちはここで、こころが学校に行けなくなる理由を目の当たりにし、そしてそれを周りに打ち明けることすらできなかったこころの心情を知ります。

不登校といっても学校に行けない理由はそれぞれです。

しかし何の理由もなく、行けなくなるというケースは少ないと私は思っています。

だからといって、それをいざ言語化して他者に伝えられるかというとそれも難しいとも思います。

もちろんこころだけに限らず、他の6人の背景も壮絶で、やはりそれを人には伝えづらい、言葉にする難しさがある状況なのだと感じずにはいられませんでした。

大人たちはどう考えどう動く

子ども達の視点だけでなく、大人たちの行動にも注目したいのがこの作品です。

冒頭では、毎日「お腹が痛い」を聞いてうんざりする母親の行動や、その母親から発せられる言葉から感じる独特の気まずさ。

心の教室の先生としてこころを気にする喜多嶋先生、一方の生徒の意見を鵜呑みにして不登校児への対処を間違える担任の教師。

相対する両者の対応の描写はまさしくリアルでした。

実際にこういった場面はよく見ましたし、そういったことで気持ちが不安定になる子ども達も多く見てきました。

そんな大人たちに苛立ちを覚えたり共感したり、様々な感情が湧いて出てくるのもこの作品の魅力です。

誰が偉くて誰が悪い、そう単純に決めるものでもないと思いますが、この作品をご覧になった方は誰目線で観ていたでしょうか。

立場が違うとまた違う視点での感想を持つかもしれませんね。

最後に

私にとって辻村深月さんという方は初めての「好きな作家さん」です。

読書が嫌いだった、苦手だった私にそんな人が出来たことに自分自身驚きを隠せません。

そんな大好きな作家さんの大好きな作品を大きなスクリーンで観れて本当によかったです。

ホームページでもアナウンスされていることなので触れますが、入場者特典の粋な演出はまさしく「エモい」です。

本では語られなかった物語がそこにはありました。

作品を読んで、観て、得られた余韻をより長く、より幸福感に満たしてくれた特典に感謝しつつ今回の記事は終わりたいと思います。

興味を持った方、ぜひ劇場に足を運んでみてください。そしてその足で本屋に向かってください。

かがみの孤城パンフレットと入場者特典
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